研究概要 |
1. 平成10年度は破裂を伴う急性心筋梗塞による突然死77例(男51,女26,47〜94歳)を集積し,計画に従って梗塞部位,梗塞の病理学的chronology,線維化の有無,出血性梗塞の有無,破裂部位,破裂様式(Becker分類による),破裂部の壁厚(非梗塞部に対する比率),心内膜亀裂の有無,破裂管壁血栓の病理学的chronology,心外膜亀裂の数と長さ,心嚢血腫量,心嚢内凝血の有無などについて検索した.冠動脈については,血栓の有無と病理学的chronology,粥腫破綻の有無と形態などについて,連続切片を作成して検討した. 2. 平成10年度は,心肺蘇生術の影響を検討するため,蘇生術施行の有無によって2群に分け,上記項目についてその異同を検索した.その結果,心肺蘇生術施行例と非施行例との間に病理形態学的相違が全く観察されなかった.このことは,心肺蘇生術によって梗塞部心筋が破裂する可能性が極めて低いことを示唆するものと考えられた. 3. 冠動脈病変については,75例に血栓が,2例に塞栓(アテローム塞栓1例,石灰化塞栓1例)が観察され,検索例全列の冠動脈責任病巣が確認された.血栓の認められた75例中,70例に粥腫破綻(plaque disruption)が確認された.以上の知見は,破裂を伴う急性心筋梗塞による突然死においても,冠動脈粥腫破綻が梗塞病変の基盤となっていることを示すものである. 4. 平成11年度は,以上の検索を続行するとともに,心筋梗塞のひろがりと時間経過,破裂の形式と破裂機序などについて検討する予定である.
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