研究概要 |
本研究は転写因子NF-κBとSP1との相互作用から血管内皮細胞におけるP-セレクチン遺伝子の転写調節機構を解明し、白血球のrollingを制御する新たな抗炎症療法をめざそうとするものである。すでに、研究者はショウジョウバエ細胞、He1a細胞などを用いてP-セレクチン遺伝子の転写調節がNF-κB応答性DNA配列を介して、p50/p50、Bcl-3、Sp1の相互作用の上に極めて精緻に制御されていることを明らかにした(F.Hirano,et al.Mol.Cell.Biol.,1998).すなわち、P-セレクチン遺伝子を正に制御するNF-κBのDNA結合領域にはSp1が直接結合することを明らかにした。Sp1はP-セレクチン遺伝子を正に制御するがこの転写誘導作用はNF-κB(p50/p50/Bcl-3あるいはp52/p52/Bcl-3)よりも弱く、NF-κBによる正の転写制御を抑制することを証明した。さらに、これらの現象が、内因性の転写因子によっても制御されているかどうかについて検討した。その結果、1、血管内皮細胞においてインターロイキン4によってP-セレクチン遺伝子は誘導され(RT-PCR法)、細胞膜上に表出されること(フローサイトメトリー、HL-60細胞を用いた接着実験)、2、非刺激下で内因性Sp1の発現量によってP-セレクチン遺伝子の発現量に差があること、3、内因性SP1のDNA結合活性を低下させることによってP-セレクチン遺伝子の発現量に差があることなどが明らかとなった。現在、インターロイキン4刺激下で誘導される転写因子の同定とP-セレクチン遺伝子発現におけるプロモーター上の結合部位および相互作用について検討している。
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