研究概要 |
現在までに申請者らは、予後不良アグレッシブ型B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)8名(平均生存16カ月)ならびに予後良好アグレッシブ型B-NHL9名(平均生存90カ月)の腫瘍組織、コントロールとして非悪性疾患患者2名の脾B細胞からmRNAを抽出し、逆転写反応後に任意の配列からなるセンスプライマーを用いて発現遺伝子の非特異的なPCR増幅(differential display法)をおこなった。このフィンガープリントを比較することで、予後不良群に強く発現する遺伝子としてSTK15/BTAK、予後良好群に強く発現する遺伝子としてB細胞表面抗原であるCD21分子を同定した。いずれも既知の遺伝子であり現在までに以下の報告がありる。 (1) STK15/BTAK 細胞分裂周期(M期)の中心体に存在し、染色体のinstabilityに関与するkinaseとして同定(ヒトの遺伝子は1998年にクローニング)されたが、その後癌細胞の不自然な染色体数の増加、即ちaneuploidyに関与することから癌遺伝子としての性格が注目されている。しかしながら、リンパ球系細胞の癌化における役割についての報告は無い。 そこで、我々は、STK15/BTAK全長遺伝子を発現ベクターにクローニングし、STK15/BTAK陰性B細胞に遺伝子発現させることで細胞周期の測定、増殖能の変化を測定しようと準備を進めている。これを通じて、発癌や癌の悪性度におけるその基礎的な役割を検索する予定である。 (2) CD21分子 CD21分子は当初ヒト成熟B細胞表面の膜糖蛋白として同定され、その後の研究により、細胞膜上でCD19分子と複合体を形成しB細胞の活性化に関与すること、ヒトC3dならびにEpstein-Barrウイルスのレセプターであること、16のエクソンから成る細胞膜外ドメインを持ち、骨髄・扁挑・脾臓由来のB細胞はエクソン3,7を欠如していること、抗腫瘍物質であるインターフェロンαのレセプターの一つであること、等が知られている。 そこで我々は、CD21分子のインターフェロンαのレセプターとしての機能に注目し、CD21発現程度の異なる細胞株においてインターフェロンαに対する反応性、ならびにCD21遺伝子をトランスフェクションにより強制発現させた細胞株において、インターフェロンαに対する応答を現在測定中である。即ちCD21分子のインターフェロンα癌治療における役割を検索中である。
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