抗Proliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA)抗体の対応抗原であるPCNAは細胞内でサイクリン、CDKなどと高分子複合体を形成している。我々はマウスモノクローナル抗PCNA抗体を用いることにより、PCNAと結合する複数の蛋白を同時に精製することに成功した。自己免疫疾患患者血清のPCNA複合体との反応性を検討したところ、抗PCNA抗体陽性患者血清が複合体に存在する複数の蛋白と反応することが明らかとなった。 抗PCNA抗体陽性血清には抗Ki抗体が高率に検出されることが知られているが、PCNA複合体に存在する自己抗原の特異性を検討した結果、複合体中にはKi抗原が存在することが明らかになった。以上の結果より、PCNA複合体には複数の自己抗原が存在し、同一患者血清中に複合体に対する自己抗体が共存することが証明され、これらの自己抗体の産生の背景にもPCNA複合体による抗原提示を介したantigen drivenが強く関与していると考えられた。PCNA複合体に存在するKi抗原が直接結合する蛋白を同定する目的で、PCNA複合体とKi抗体原および抗Ki抗体を用いたwest-western blottingを行ったところ、Ki抗原はPCNA複合体に存在する16kD蛋白と特異的に結合することが明らかとなった。 多くの自己抗体が認識する対応抗原上のepitopeは抗原の機能的部位に一致することが知られている。Ki抗原の生物学的意義を検討する目的で、cDNAより転写・翻訳を行いN-およびC末欠損融合蛋白を作成し、抗Ki抗体との反応性をwestern blottingにて検討した。多くの抗Ki抗体はKi抗原のN末側を認識するが、抗原認識には多様性が認められた。現在Ki抗原の断端を用いて、Ki抗原上の16kD蛋白との結合部位とepitopeとの関連性を検討中である。
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