1. 我々は、緑膿菌感染症難治化要因のひとつとして液性免疫応答異常を想定し、特に細胞外に放出される内毒素(endotoxin、以下LPS)および外毒素(exotoxin A、以下ExA)のB細胞機能に及ぼす作用について、ヒトにおけるT細胞-B細胞間の接触反応のモデルを用いてin vitroで検討した。 2. LPSは、従来報告されているとおり、免疫グロブリン(Ig)産生能に明らかな影響を示さなかった。 3. ExAは、濃度依存性にIg産生を有意に抑制し、ExAのT細胞依存性免疫応答に対する免疫修飾作用が明らかになった。多くの緑膿菌臨床分離株は、in vitroでExAを産生することがわかっており、実際の感染症発症下でも同様の機序が難治化要因として働いている可能性が想定される。 4. このExAの作用は、ADP ribosylationによる蛋白合成阻害に起因している可能性が強く示唆された。すなわち、ExAのreceptorへのbindingによる刺激ではなく、ADPribosyltransferaseとしての酵素活性が免疫修飾作用に必須であると考えられた。 5. LPSとExAのsynergismは認められなかった。このことから、両毒素の液性免疫応答に対する作用点は互いに独立していると思われる。 6. 以上の我々のデータは、最も強力なvirulence ractorであるExAが、液性免疫反応に対しても抑制的に働くことを明らかにした点で大変重要であり、1999年の国際化学療法学会で報告予定である。ExAのこの働きは、緑膿菌感染症の難治化要因のひとつとしてとして理解されるばかりでなく、免疫抑制や生態防御の研究に広く関連しており、サイトカインやケモカイン存在下におけるExAの作用の変化など、引き続き詳細な検討を行なう予定である。
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