筋炎は、原因不明の全身性炎症性疾患であるが、免疫系が発症に関与することが推定されている。その一つの根拠として、疾患と主要組織適合抗原(HLA)との相関がある。欧米ではHLA-B8およびDR3との相関が報告されているが、ともに日本人においては非常にまれなタイプである。これまで、日本人における筋炎発症とHLAとの関係については解析がなされていない。本年度は、84名の筋炎患者(多発性筋炎22例、皮膚筋炎46例、他の膠原病に伴う筋炎16例)および175名の健常人について、HLAクラスI抗原およびクラスII対立遺伝子の解析を行った。HLA-B7を有する割合は、全筋炎群において健常人に比して有意に高率であり、これは主として他の膠原病に伴う筋炎において高率であったことによる。HLA-DRB1^*08対立遺伝子を有する割合も全筋炎群において高く、特に多発性筋炎(PM)および皮膚筋炎(DM)において高率であった。一方、HLA-DQA1およびDQB1対立遺伝子で、健常人に比して筋炎患者で有意に高率に認められたものはなかった。HLA-A24およびB52は、皮膚筋炎において多発性筋炎より有意に高率であった。逆に、HLA-CW3は、多発性筋炎において皮膚筋炎より有意に高率であった。以上の結果より、日本人筋炎患者におけるHLA対立遺伝子との相関は欧米人とは異なっていることが示された。さらに、HLAクラスII遺伝子座、特にHLA-DRB1遺伝子座が筋炎発症に関与していることが推定された。さらに、HULクラスI遺伝子座は、筋炎の異なった病像形成に関与していることが示唆された。HLAクラスI遺伝子産物から抗原提示を受けるCD8陽性T細胞が筋炎の発症に関与することが推定されており、今回の結果は、筋炎の病因を検討するうえで重要な知見と考えられた。
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