C型慢性肝炎の治療としてインターフェロン療法が広く行われ、その有効性が認められているが、約80%の症例では肝炎の再燃が認められ、インターフェロン療法のみでC型慢性肝炎を完全に治癒せしめることは困難である。また昨今、Ribavirin併用の有効性が報告されているが、Ribavirin単独では有効性はなく、特に今後増大すると考えられる肝移植後の移植肝への再感染に対して、インターフェロン投与は拒絶を誘発するため、その使用には制限がある。またNS3領域に対するインヒビターの開発もHIVで経験されたほど容易ではなく、困難を伴っている。HCVのウイルス蛋白翻訳は5'NTRに存在するInternal ribosomal entry site(IRES)にリボソームが結合することにより始まる。我々はこれまでにHCVの5'NTRの構造を詳細に解析し、その特徴的な二次構造を明らかにしてきた。またHCVの蛋白翻訳能(IRES活性)を細胞内でモニターするため恒常的にHCV-IRESとそれにより翻訳されるレポーター遺伝子を導入した細胞を樹立し、培養条件によるHCV-IRES活性を検討した。その結果、細胞周期とHCV-IRES活性が密接に関係していること、また培地の血清濃度によりHCV-IRES活性が著しく変化することを見出した(投稿中)。今後インターフェロンや、各種サイトカイン存在下の、いわゆる抗ウイルス状態下におけるHCV-IRES活性の検討、FasイガンドやTNF-α存在下におけるアポトーシス細胞内情報伝達活性化状態でのHCV-IRES活性の検討などを行い、ウイルス性肝炎における生理的所条件下でHCVの蛋白翻訳が如何に制御されているかを明らかにする。本検討によりHCVの蛋白翻訳を制御する外的因子が明らかになれば、新しい抗ウイルス剤の開発につながるものと考えられる。
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