ヒト胃粘膜におけるFasの発現は、RT-PCR法による検討ではH.pylori感染の有無に関係なく恒常的に認められたが、免疫染色による蛋白レベルでの検討では感染群で高発現しており、その局在は胃底腺部で強い傾向が認められた.Fas ligandの発現はmRNA、蛋白レベルのいずれにおいてもH.pyloi感染群で有意に高く、発現細胞は粘膜固有層内の胃底腺に隣接した単核球であった.また、TUMAL法によるapoptosis細胞の同定もおこなったが、H.pylori感染群で高率に認められ、特に胃底腺部の細胞で増加する傾向があった. 一方、胃癌細胞株(AGS)を用いたin vitroにおけるFasの発現に関する検討では、H.pylori菌体破砕抗原およびIFN-γのいずれの刺激においても濃度依存性に発現が増強された(FACS).同様にPBMCをH.pylori抗原およびIFN-γで刺激後、CD4、CD8陽性T細胞をimmunomagnet beadsを用いて分離し、Fas ligandの発現をRT-PCR法にて検討したが、いずれの刺激においてもFas ligandの発現はCD8陽性細胞に優位であった. さらにAGS細胞とPBMCをco-cultureし、in vitroにおいて活性化されたT細胞が上皮細胞に対してFasを介した系でapoptosisを誘導しうるかについても検討を加えた.24時間後のco-cultureの後に上皮細胞上のAnnexin Vの発現をFACSによって測定したが、H.pylori抗原刺激によってapoptosis細胞(Annexin V陽性細胞)は優位に増加し、この現象はapoptosis阻止型のFas ligand抗体によって約30%抑制された.
|