研究概要 |
テロメラーゼ活性は、各種の癌で高頻度に認められることが報告されている。これまでに私たちは、切除膵癌の95%にテロメラーゼ活性を認め、膵良性腫瘍性病変や慢性膵炎では認めないことを報告してきた(Cancer Res.57:326-331,1997)。また、膵管ブラッシング細胞診で得られた細胞に対してp53の免疫染色を行い、陽性例のp53遺伝子については、コドン273の変異が膵癌の浸潤に関与していることを報告してきた(Cancer,82:1487-1494,1998)。 1.膵液中テロメラーゼ活性の検討による膵癌の早期判断 さらに私たちは、テロメラーゼ活性を膵癌の術前診断に応用するため、内視鏡内逆行性膵管造影下に採取した膵管上皮細胞のテロメラーゼ活性を測定した。膵癌の診断率は80.8%で、細胞診の50.0%よりも有意に高く、特に、画像診断では確定診断が困難であった上皮内癌および小膵癌の診断において非常に有効であった(胆と膵.20(9)765-769,1999)。 2.テロメラーゼ活性を用いた粘液産生膵腫瘍の悪性度診断 粘液産生膵腫瘍の切除検体を用いて、k-rasとp53異常、テロメラーゼ活性を測定し癌化との関連を検討した。過形成や腺種ではk-rasに変異、非浸潤性粘液産生膵癌ではテロメラーゼ活性、浸潤性ではp53の異常が認められた。粘液産生膵腫瘍の早期診断においてもテロメラーゼ活性が重要であることを初めて示した(DDW-Japan,1999)。 以上より、私たちは、1.膵癌の確実な早期診断法として、膵液細胞診を用いたテロメラーゼ活性の測定法を確立するとともに、2.粘液産生膵腫瘍の悪性度診断においてもテロメラーゼ活性の有用性を示した。今後も、膵担道系腫瘍の早期診断と診断体系の確立を目指して、症例を重ねて検討を行っていく予定である。
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