研究概要 |
これまでの研究で、ビタミンAが低蛋白質食や正常蛋白質食で飼育したマウスの小腸粘膜内のIgA量を上昇させることを報告した。さらに、腸粘膜内のTh2サイトカイン(IL-4,IL-5,IL-6)レベルも測定したところ、IL-5の上昇とIgAの上昇が最も有意に相関することがわかった。本研究では、ビタミンAによる腸粘膜内IgA量の増加におけるIL-5の役割をin vivoで明らかにするため、IL-5受容体欠損マウスを用い小腸粘膜免疫に及ぼすビタミンAの作用を解析した。 東京大学医科学研究所の高津聖志先生より御供与いただいたIL-5受容体α鎖欠損マウスを用いた。6週齢の正常マウス、ヘテロマウスおよび欠損マウスのそれぞれに20%卵白蛋白質食を2週間与えた。さらに、その間それぞれの群を二つに分け、一方にはコーン油(vehicle)を、他方には1mg/mouseのretinyl acetateを毎日胃内投与した。小腸粘膜内のIgAとサイトカイン量は、EKISAで測定した。 ビタミンA非投与時の正常マウス、ヘテロマウスおよび欠損マウスの体重変化は、それぞれ1.42±0.67,1.68±0.16,1.12±0.43g/day(平均±偏差値)と有意な差はなかったが、ビタミンA投与時の体重変化は0.26±1.31,-0.18±1.27,-0.37±0.83g/dayで欠損マウスの体重減少が著しかった。その他のphenotypeには差は見られなかった。腸粘膜内IgA量は、正常マウス、ヘテロマウス、欠損マウス群ともほぼ同じ値を示した。ところが、ビタミンAを投与した時、正常マウス、ヘテロマウスのIgA量は上昇したのに対し、欠損マウスではほとんど変化しなかった。一方、腸粘膜内のTh2サイトカインは、すべてのマウス群でビタミンA投与により上昇することを確認した。以上の結果より、ビタミンA投与による腸粘膜内IgAの増加には、IL-5のシグナル伝達が必要であることが示唆された。現在、低蛋白質食を与えたIL-5受容体α鎖欠損マウスでのビタミンAの効果を検討するとともに、その分子メカニズムを解析中である。
|