平成11年度、我々はリアルタイムな大腸腫瘍形態の定量化とその悪性度との相関性に関して以下の検討を行った。我々はこれまで大腸腫瘍の陥凹部を定量化し、F-circleというパラメーターが悪性度と相関性があることを報告してきた。そこで11年度の研究では内視鏡的に切除された陥凹部大腸腫瘍68病変の病理標本を使い癌抑制遺伝子p53の免疫染色を行い、一方ではその腫瘍陥凹部を画像解析装置によりF-circleを使って定量化し、腫瘍形態と遺伝子変異との相関性について検討した。方法は拡大内視鏡によって表面構造および微細腺管開口部構造を十分観察された陥凹型の大腸腫瘍を内視鏡的に切除し、切除後標本を10%ホルマリン液にて固定、その画像を画像解析装置に取り込み、腫瘍の陥凹形態のF-circleを測定した。測定後最大割面でプレパラートを作成しp53免疫染色を行い、その染色様式をG0陰性・G1ー部陽性・G3全領域陽性・G2をGIとG3の中間とし、F-circleとp53免疫染色との相関性を解析した。その結果F-circleはG0で0.622±0.110(mean±SD)、G1で0.517±0.168、G2で0.469±0.149、G3で0.467±0.135と癌抑制遺伝子の変異が多くなるほど腫瘍のF-circleが有意に低下していくことを証明した。すなわち大腸腫瘍に関し、その陥凹形態の画像をコンピューターに取り込みF-circleを測定することにより、その腫瘍の遺伝子変異度をリアルタイムに評価できる可能性があると考えられ、今後のリアルタイム内視鏡的画像解析の研究のおおいに役立つことと思われた。
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