研究概要 |
平成11年度は、各種進行段階にある患者検体を用いて、慢性肝疾患における塩基性線維芽細胞成長因子(Basic-fibroblast growth factor:b-FGF)の変化について、免疫組織化学ならび生化学的に検討した。 方法としては、診断的.治療的必要性から肝生検を行った各種線維化段階(慢性非活動性肝炎:CPH,慢性活動性肝炎:CAH,肝硬変:LC)にある患者肝組織とその同一時期の患者血清を用い行った。形態学的検討は肝組織内のb-FGFの局在を酵素抗体間接法により染色して行った。また生化学的検討は、単位容積あるいは重量あたりの血清および肝組織(ソニケーター処理にて粉砕)におけるb-FGF量をサンドイッチEIA法を応用して計測した。 結果、肝硬変患者肝組織においてb-FGF陽性反応は伊東細胞、線維芽細胞とその移行期にあるmyofiboblastに陽性と考えられた。この所見をさらに確実なものとするために、免疫電子顕微鏡的観察や特異的細胞抗原の同定、すなわち伊東細胞におけるdesminやmyofibroblastにおけるf-actine,alpha-smooth muscle actinなどの検索が併せて必要と考えている。またこのb-FGF陽性反応が、切片中の全ての同細胞系に陽性を呈しない点に関し解明する必要性があると思われる。その一因としては、線維化段階の差異により、活性化される細胞種とその数に変化が生じるためと考えられ、例数を重ねることにより一端が明らかとなると考えている。一方患者血清および肝組織中のb-FGF量の変化については、現在のところ個体間のばらつきが大きく、その計測方法と計測時期について再検討中である。すなわち肝組織での計測において、乾燥重量,湿重量いずれを基準とすべきか検討中である。また血清については採血時期による差異がみられ、実際の肝組織内での変動を反映したものであるか疑問が提起された。これらはtransaminaseなど炎症マーカー、および既存の線維化マーカとの対比を行うことで一定の見解が得られると考えられ,肝組織同様例数を重ねる必要性が示された。実験動物モデルによる検討は、現在四塩化炭素により肝硬変を作成中であり、今後開始の予定である。
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