研究概要 |
慢性肝障害の肝線維化過程におけるb-FGFの臨床的意義を明らかにするため、各種肝疾患患者の血清および肝組織中のb-FGFを測定するとともに、肝組織内のbasic-FGFの局在ついて検討した. 脂肪肝5例、慢性肝炎10例,肝硬変15例,肝癌9例を対象とした。血清および肝組織中のb-FGF値はモノクロナール抗体を用いたサンドイッチEIA法により測定した。血清P-III-P,IV-C(7s domain),ヒアルロン酸を測定、また生検肝組織所見をKnodellらのHAIscoreに従って算定し、血清b-FGF値との相関を検討した。肝組織中のbasic-FGFの局在はホルマリン固定パラフィン切片を用い、proteinase-K処理による抗原賦活化後,抗ヒトb-FGFモノクロナール抗体およびmyofibroblastの細胞骨格である平滑筋アクチン抗体を用いて連続切片上で酵素抗体間接法を行い対比検討した. 血清b-FGF値は慢性肝炎13.6pg/mlと対照群の脂肪肝9.5に比し明らかな上昇は認められなかったが、肝硬変では29.6pg/mlと脂肪肝、慢性肝炎に比べ有意に高値を示した。肝癌でも36.0pg/mlと著明に上昇を示したが、肝硬変群との間に明らかな差はみられなかった。肝組織中のb-FGFは硬変肝で168.2pg/mlと非硬変肝85.8に比べ明らかに上昇を認め,臨床病期別には代謝期33.6pg/mlと非代謝期12.4に比べ高値を示し、肝での蛋白合成能との関連が示唆された。血清IV-C、PIIIP、ヒアルロン酸との間に相関はみられなかったが,HAIscoreとの対比では,特にcategoryIV(線維化)との相関がみられ、肝線維化の進行に伴う血清b-FGF値の上昇が示された。肝組織内b-FGFの局在は,線維性隔壁内および拡大を示した門脈域内の紡錘型細胞に陽性で,連続切片法を用いた平滑筋アクチンとの対比上,多くはmyofibroblastに]相当すると考えられた。
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