研究概要 |
実験1:遺伝子導入肺癌細胞株を用いた検討--PG系の情報伝達物質であるトロンボキサン(TX)A_2は血小板凝集,脈管収縮を起こし,PGI_2は血小板凝集抑制・脈管弛緩に働く.腫瘍血管におけるこれらの関与を解析するため,マウス移植腫瘍モデルにPGI_2合成酵素(PGIS)遺伝子,TXA_2合成酵素(TXAS)遺伝子を導入し検討した.各遺伝子をneo耐性発現ベクターpCI-neoに組み込み,リポソーム法によりルイス肺癌細胞株に導入しG418で細胞の選択を行った.得られたPGIS遺伝子導入細胞の培地中のPGI代謝産物PGF1α濃度をELA法で測定し,control細胞株に比し約3倍の濃度であることを確認した.stable transformantを,C57BL/6マウスに5×10^5個皮下接種し,腫瘍増殖・生存期間を検討した.PGIS遺伝子導入は腫瘍増殖を抑制(第18日容積0.4vs1.4cm^3,p<0.05)し,生存期間を延長(24日vs44日,p<0.05)した.興味深いことにTXAS遺伝子導入も腫瘍増殖を抑制(第18日容積0.8vs1.4cm^3)した.これらの結果からは,血小板・脈管への作用以外の機序の関与も考えられ,さらに解析中である.以上の結果は第39回日本呼吸器学会総会(99年3月)で発表予定である. 実験2:遺伝子導入動物を用いた検討のための予備実験--プラスミドベクターにPGIS遺伝子あるいはTXAS遺伝子導入を組み込んでの細胞導入実験で各遺伝子導入による発現の確認と並行して,アデノウイルスベクターを用いた発現ベクターを構築中である.
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