1) 可溶型VEGF受容体の発現と活性の確認。 COS細胞にAdVEGF-ExRをmoi 10で感染させた後培養上清中へ分泌される可溶型VEGFをELISAで確認した。またこの培養上清には精製VEGF標品に対する結合活性があることをSDS電気泳動およびウェスタンプロットによって確認した。網膜由来の血管内皮細胞にAdVEGF-ExRを感染させておくとVEG濃度に依存したthymidineの取り込みが抑制され、DNA合成阻害がおきていることを確認した。またin vivoにおいてもヌードマウス腹腔に予めAdVEGF-ExRを投与しておくと、マウス皮下に移植したVEGF混入マトリゲル内への血管内皮の浸潤抑制が観察された。またヌードマウス腹腔に3X10^8pfuのAdVEGF-ExRを投与し、経時的に可溶性VEGF受容体の血中濃度をELISA法を用いて測定した結果、投与後7日めに血中濃度は3.5nMとなり14日めにも1nM以上の濃度を維持していた。 2) 可溶型VEGF受容体による抗腫瘍効果の検討 14種の肺癌細胞を培養し、その培養上清中のVEGF濃度をELISA法を用いて測定したところ、H358、H157、EBC-1、PC-9の4種の細胞株に比較的高い産生能を認めた。この中で容易に腫瘍を形成するH157細胞を以後の実験に用いた。ヌードマウス皮下にVEGF高産生株の一つであるH157細胞を移植し、同時にAdVEGF-E球を腹腔内に投与して腫瘍形成の経過を観察した。コントロール群では移植後14日めには全て腫瘍の形成が見られ、以後急速に腫瘍サイズは増大した。一方、AdVEGF-ExR投与群では完全に腫瘍の形成が阻害された。組織学的には血管形成は全くみられず、腫瘍組織全体が壊死に陥っていた。
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