肺サーファクタント蛋白質SP-AおよびSP-Dは、C末端側に糖鎖認識領域(CRD)を有するC型レクチンのコレクチン・サブグループに属する。コレクチンは、肺の生体防御において重要な役割を果たしている。本研究は、コレクチンとエンドトキシンとの相互作用、および、その受容体に着目し、肺コレクチンによる生体防御の分子機構を解明することを目的として遂行された。以下に結果を要約する。 1. SP-Aは、rough型リポ多糖(LPS)であるRc LPS(E.coli J5)とRe LPS(Salmonella minesota Re595)に濃度依存性に結合したが、smooth型LPS(E.coil O26:B6およびO111:B4)には結合しなかった。 2. SP-Aは、smooth LPSにより惹起されたTPA分化誘導U937細胞からのTNFα分泌およびTNFαmRNA発現を阻止したが、rough LPS誘導細胞応答を抑制できなかった。 3. U937細胞とSP-Aを培養後、SP-Aを除去してLPSと細胞を反応させても、smooth LPSによるTNFα分泌は阻止されたが、rough LPSによる細胞応答はむしろ増強した。ラット肺胞マクロファージにおいても同様の結果が得られた。 4. SP-Aアフィニティーカラムによる解析でU937細胞可溶化画分のSP-A結合蛋白質の一つとしてLPS受容体であるCD14が同定された。 5. リガンド結合法により、SP-Aが精製組換えCD14に結合することが証明された。 6. smooth LPSに結合するCD14はSP-A存在下で減少し、rough LPSに結合するCD14はSP-Aによりむしろ増加することが示された。 以上の結果より、SP-AはCD14と相互作用を有することによってエンドトキシンによる細胞応答を制御していることが示された。
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