研究概要 |
サーファクタント蛋白質(SP)は肺胞II型細胞より産生される蛋白質で,SP-A・SP-B・SP-Dは細気管支のクララ細胞でも産生されると報告されている.SP-Aは免疫組織化学的に約50%の肺腺癌でのみ発現することが知られている.そこで,SP産生細胞が正常では存在しない胸水中でSP産生細胞およびSPmRNAの有無およびSP-AとSP-Dの濃度を測定し,SPの肺癌診断における臨床的有用性および末梢肺腺癌の起源細胞の同定が可能か否か検討している.これまで,SP-Aは原発組織同様に免疫細胞化学的に50%の肺腺癌でのみ発現を認めた.一方,SP-AmRNAは83%の肺腺癌でのみ陽性で,他の組織型および他臓器癌に伴う胸水では認められなかった.以上より,胸水中SP-AmRNAの検出は免疫染色よりも鋭敏で,基礎疾患の診断により有用であることが確認された.一方,他のSPと異なり,SP-Cは肺胞II型細胞でのみ産生されており,その前駆物質であるproSP-Cについて免疫細胞化学的検討を行ったところ肺腺癌の25%に陽性所見を認めた.これと対照するために,細気管支のクララ細胞に特異的なCC10についても同様に検討したところ,CC10の発現は認められなかった.このことから,末梢肺腺癌の起源のひとつとして肺胞II型細胞が推定される.現在,これらの結果について投稿予定である.今後,SP-CのmRNA検出を加え,検討を加えていく予定である.
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