研究概要 |
サーファクタント蛋白質(SP)は肺胞II型細胞より産生される蛋白質で,SP-Aは細気管支のクララ細胞でも産生されると報告されている.SP-Aは免疫組織化学的に約50%の肺腺癌でのみ発現することが知られている.そこで,SP産生細胞が正常では存在しない胸水中でSPの発現を検討し,SPの肺癌診断における臨床的有用性および末梢肺腺癌の分化傾向について検討した.SP-Aは免疫細胞化学的に20例中10例の肺腺癌でのみ発現を認め,RT-PCRでは17例で陽性で肺腺癌以外の疾患では陰性であり,一方,他臓器癌や良性疾患を基礎とする胸水例では免疫染色およびRT-PCRともに全て陰性であった.以上より,胸水の基礎疾患としての肺腺癌の診断にSP-AのRT-PCRはより有用であることが示唆された.また,肺腺癌例でSP-AmRNA陽性の胸水中SP-A濃度は926±1306ng/ml,SP-AmRNA陰性では40±25ng/mlと有意にSP-AmRNA陽性例で高値を示した.以上のように,肺腺癌では原発部位と環境の異なる胸水中でもその特徴を保持しうることが示唆された.そこで,肺胞II型細胞に特異的なproSP-Cおよびクララ細胞に特異的なOC10で肺腺癌症例の免疫染色を行うとOC10は全て陰性であったが,proSP-Cは6例で陽性であり,末梢肺腺癌はクララ細胞よりむしろ肺胞II型細胞への分化傾向を有することが示唆された.以上のことをまとめ現在投稿中である.今後,RT-PCRを加えさらに検討を加えていく予定である.
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