平成11年度は、肺気腫患者に対する片側肺容量減少手術の胸壁運動に与える影響を探るために、DynamicMRIを用いて手術前後の胸壁運動を検討した。対象は肺気腫患者6名(年齢66.3才、平均FEV_1≒0.9L)。MRI(1.5T)は、高速スピンエコー法で、T_1強調画像を時間分解能1画像/0.4秒で撮影し、同時に行った換気量の測定から各肺気量位での胸壁運動を肺容量減少手術前後で比較した。深呼吸時の胸壁の矢状断、冠状断、前額断像を各30枚連続撮影し、各肺気量位での横隔膜上下運動、肺門レベルの胸郭前後運動および胸郭左右拡大運動を解析した。各画像撮影時の肺気量をX軸に、各画像の測定値(胸壁運動)をY軸にプロットすると、手術前後で、ほとんどの測定点で、胸壁運動と測定時の肺気量の間に良好な直線関係が認められた。従って、最小二乗法を用いて近似直線Y=SX+C(S:測定部位の動きが換気量変化に寄与する程度、C:呼吸運動時の呼気終末時の測定部位の長さ)を求め、手術前後の比較を行った。その結果、手術後では、手術側の矢状断、冠状断での胸郭断面積の縮小が観察された。また、矢状断での横隔膜腹側、中央のSが増加したことから、同部位の動きが改善したことが確認された。手術前に患者6名中3名の患者で吸気の進行により横隔膜が挙上するという横隔膜腹側の奇異性運動が観察されたが、術後に奇異性運動は消失していた。これら結果から、肺容量減少術は、胸壁運動の改善をもたらし、呼吸困難の改善に寄与していると推定された。
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