申請者はラットを低酸素環境に暴露した際に生じる肺血流分布の変化を非放射性マイクロスフェア法を用いて評価し、低酸素性肺血管収縮が不均一に生じるか否かを検討した。 オスのSprague-Dawleyラット14匹を低酸素暴露(Hx)群8匹と室内気対照(Nx)群6匹に分けた。ハロセン吸入麻酔下に頚部から動静脈カテーテルを留置し、麻酔から十分に覚醒した後に実験を開始した。実験中、すべてのラットで血圧、脈拍をモニターした。Hx群ではバリウム標識マイクロスフェアを静注後、FlO_2 0.07の低酸素チェンバーに移し10分後にヨード標識マイクロスフェアを低酸素下に静注した。Nx群では室内気下10分間隔で2種類のマイクロスフェアを静注した。2種類のマイクロスフェア静注後、動脈血ガス分析を行った後、過量の麻酔下に全肺を摘出した。摘出した肺を28ピースに分けた。それぞれの組織を摂氏60度で乾燥し、乾燥重量を測定後2NのKOHで完全に溶解した。各ピースに含まれるマイクロスフェア量をX線蛍光分析を用いて測定した。各ピースに含まれるマイクロスフェア量はピース内の血流量を反映する。各ピースで、全肺単位重量あたりの血流量に対する各ピース単位重量あたりの血流量を相対血流量として算出した。両群各サンプルの2回測定した相対血流量(1回目に測定したベースの相対血流量と2回目に測定した相対血流量、Nx群では1回目と同じ室内気の条件、Hx群では低酸素暴露開始10分後の相対血流量)の相関係数(r)を求めた。 Nx群では2回測定した相対血流の相関係数rは0.899で各サンプルの相対血流量はほぼ一致した。それに対してHx群のrは0.694であり室内気の条件と低酸素の条件で肺血流分布に違いを生じていた。FlO_2 0.07の低酸素暴露10分後、肺血流分布は変化していた。本実験で低酸素性肺血管収縮が不均一に生じている可能性が示唆された。 次年度、主に肺血管透過性、肺内水分量および炎症細胞の関与についての検討を加え、得られる知見より学術論文を作成する予定である。
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