研究概要 |
多発性硬化症は中枢神経系の炎症性脱髄疾患で、病初期に血液・脳関門の破壊され単核球が神経系に進入するといわれている。この血液・脳関門の破壊には細胞外マトリックスの主要な分解酵素であるマトリックスメタロプ口テアーゼの関与が示唆されている。プラズミノーゲンアクチベーター(PA)が直接あるいは間接的マトリックスメタロプ口テアーゼの活性化に関与している。さらに最近、血液・脳関門の構成要素の一つであるラミニンがPAを誘導する活性を持っていることが指摘された。そこでわれわれは多発性硬化症患者のリンパ球のラミニンにたいするPAの活性の変化を測定した。対象は再発寛解型多発性硬化症患者(RRMS)29名と正常対象者26名である。両者の性別と年齢に有意差はない。PAA活性は125I-fibrinogenでコートしたチューブにplasminogenと患者リンパ球を添加し、20分間37度で培養し、溶液中に放出された放射線活性をカウントすることで測定する。患者リンパ球はラミニンを添加し、24時間培養した。MANOVAで多発性硬化症と対照群の反応には明らかな差が認められた(F=5.55,p=0.0012)。Lamininを加えていないリンパ球はMNNGで処理しても、しなくてもPAAに差はみとめられなかった。またMNNG処理をしていないリンパ球ではlamininを加え培養してあっても、加えていなくてもPAAに差は認められなかった。一方、lamininを加え培養したリンパ球においては、MNNG処理することでRRMS患者のみでPAAの上昇が認められた(p=0.017)。
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