研究概要 |
軽度の高ホモシステイン(Hcy)血症が決して稀な病態でないことがわかってきた現在,Hcyと動脈硬化との関連性の解明は重要な課題と考える.今回われわれは,ヒト血管内皮培養細胞(HUVEC,生化学工業,5次培養)およびヒト血管平滑筋培養細胞(HASMC,クラボウ,5次培養)を用いて検討した.安定した培養が可能であることを確認した後,セミ・コンフルエンタな状態で,0,1,5,10mMのホモシステインを添加した.添加方法はHcyが最終濃度2倍になるように各培地で溶解し,50%の培地交換により行った.蛍光顕微鏡にて,グリッドを用いて1.8mm^2あたりの細胞数を算定した.Hcy添加6時間後,12時間後,24時間後,48時間後のHUVEC生存細胞率(添加前を100%とした)は,82.9%,69.4%,80.1%,55.9%(0mM),91.1%,88.9%,85.9%,74.7%(1mM),92.1%,68.8%,50.4%,39.8%(5mM),91.0%,58.5%,26.3%,1.1%(10mM)であった.Hcy添加6時間後,12時間後のHASMC生存細胞率(添加前を100%とした)は,104.5%,119.0%(0mM),102.0%,109.9%(1mM),73.2%,37.8%(5mM),15.2%,5.4%(10mM)であった.細胞毒性アッセイ(アラマー・ブルー)においても同様の傾向を確認した.HUVEC,HASMCともに1mM添加では,対照(0mM)と同様か軽度増加傾向を示したが,5mM,10mM添加では濃度に依存して生存細胞率は低下した. 今後,低濃度添加時のさらに延長した経時的変化を評価し,細胞増殖増進効果の有無を明らかにするとともに,Hcy添加によって誘導されるmRNAからRT-PCR法により血管細胞障害因子を検討する.また培養液中の葉酸やビタミンB12濃度を変更し,従来から指摘されている高ホモシステイン血症に対するビタミン類の影響を評価し,動脈硬化への治療の可能性を明確にする予定である.
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