研究概要 |
軽度の高ホモシステイン(Hcy)血症が決して稀な病態でないことがわかってきた現在,Hcyと動脈硬化との関連性の解明は重要な課題と考える.昨年度われわれは、ヒト血管内皮培養細胞(HUVEC,生化学工業,5次培養)およびヒト血管平滑筋培養細胞(HASMC,クラボウ,5次培養)を用いてHcy添加による細胞生存率の変化を検討した.Hcy添加48時間後までの経時的変化をみた結果,HUVEC,HASMCともに1mM添加では、対照(0mM)と同様か軽度増加傾向を示すものの、5mM,10mM添加では濃度に依存して生存細胞率は低下した.低濃度のHcy添加により細胞増殖傾向が認められることは,高Hcy血症に基づく動脈硬化を示唆する結果と考えた.今年度われわれは,Hcyに基づく血管細胞障害因子を詳細に検討するため,安定した培養状態のHUVEC,HASMCに対して,1mMのHcyを4時間添加後,ISOGEN(ニッポンジーン)を用いて総mRNAを回収した後,RT-PCR法により,cDNAを合成した.Hcy無添加の他は同様の条件にて得られたcDNAを対照として,DNAアレイ・フィルター(GDA 1.3,GenomeSystems)を用いて,発現遺伝子の単離を行った.現在,Hcy添加の有無による誘導発現の差異を解析中である.差違を明らかにすることによって高Hcy血症に基づく血管細胞障害因子を明らかにしていく予定である.
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