目的:PDの幻覚、痴呆、うつなどの精神症状の発現にはセロトニン代謝系の障害が関与することが報告されている。DDCはDA代謝に関与するのみならず、セロトニン代謝にも関与することが知られている。PDにおけるDDC活性の関与を明らかにする目的で、孤発性PD患者におけるATBF1遺伝子の発現について検討した。 方法:PDにおけるATBF1遺伝子の各repeat部位についてそれぞれPCRを施行し、各alleleのrepeat数について、12%ポリアクリルアミドゲルにて泳動したバンドを切り出し、透析チューブにてPCR産物を回収・精製した。TA cloning kitにてligation・transformation後、chain termination methodで35S dATPを使用し7T Sequencing kitを用いシークエンスを施行し比較検討した。対象はBritish Brain Bankのcriteriaにより診断した孤発性PD患者であった。対照群は神経疾患や一般内科学的疾患を有さないaged-matchした成人健常人とした。 結果:ATBF1遺伝子の数々の変性疾患に見られるようなCAG repea richな部分についてPD群と対照群とで比較検索したが、polymorphismを認めず、両群間で明らかな差異を認めなかった。そこで、次に他のホメオドメイン中での三塩基繰り返し配列遺伝子における部位について検討を加えた。その結果(1)ATBF1遺伝子のホメオドメイン中でCAG repeat部以外の三塩基繰り返し配列にてpolymorphismが存在した。(2)その配列についてはPD群と対照群にてalleleの頻度に相違を認めた。 考察:CAG repeat部以外の塩基配列異常が、パーキンソン病の遺伝素因の1つである可能性が示唆された。今後臨床症状と本遺伝子との関係について検索・統計を施行していく予定である。
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