目的:PDにおけるDDC活性の関与を明らかにする目的で、前年度に引き続き、孤発性PD患者におけるATBF1遺伝子の発現について検討した。 方法:PDにおけるATBF1遺伝子の各repeat部位についてそれぞれPCRを施行し、PCR産物を回収・精製した。TA cloning kitにてligation・transformation後、chain termination methodで35S dATPを使用して7T Sequencing kitを用いシークエンスを施行し比較検討した。更にPD患者群を発症年齢、罹病期間、重症度、幻覚の有無、痴呆の有無、うつの有無、抗パーキンソン薬に対する反応によってグループ分けし、各グループにおけるalleleのrepeat数を比較検討した。対象はBritish Brain Bankのcriteriaにより診断した孤発性PD患者で、対照群はaged-matchした成人健常人とした。 結果:ATBF1遺伝子の数々の変性疾患に見られるようなCAG repeat richな部分についてPD群と対照群とで比較検討したが、polymorphismを認めず、両群間で明らかな差異を認めなかった。そこで更に他のホメオドメイン中での三塩基繰り返し配列遺伝子における部位について検討を加えた。その結果(1)ATBF1遺伝子のホメオドメイン中でCAG repeat部以外の三塩基繰り返し配列にてpolymorphismが存在した。(2)その配列についてはPD群と対照群にてalleleの頻度に相違を認めた。(3)PD患者群の発症年齢、罹病期間、重症度別に分類したが、各グループにおけるalleleのrepeat数に有意な差異を認めなかった。 考察:CAG repeat数以外の塩基配列異常が、パーキンソン病の遺伝素因の1つである可能性が示唆された。今後更に症例を増しPD患者群の幻覚の有無、痴呆の有無、うつの有無、抗パーキンソン薬に対する反応とalleleのrepeat数を比較し検討を加えていく予定である。
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