エンドセリンは強力な血管収縮活性を持つペプチドであり、エンドセリン変換酵素(以下ECE)によってその前駆体から活性化される。私たちは以前ECE-1のジーン・ノックアウトマウスにおいてもその組織中にエンドセリンが存在することを見出し、ECE-1の他にエンドセリンを変換する酵素が生体内に存在することを遺伝学的に証明し得た。そこで今回これらのマウスを用いて、degeneratePCRによってECEの新しいアイソフォームを単離・同定し、その酵素学的特性を生化学・薬理学・分子生物学的なアプローチで解析することを目的とする研究を開始し、ECEにアミノ酸レベルで約60%の相同性を持つ未知のDNA断片の単離に成功した。私はただちに全長cDNAを単離し、この新規メタロプロテアーゼをSoluble Secreted Endopeptidase(以下SEP)と名付けた。SEPは、心・肺を含む多くの組織で発現しており、構造上ECEおよびニュートラルエンドペプチターゼ(以下NEP)と遺伝子ファミリーを構成していた。さらに、SEPが機能的にもECEやNEPの基質である循環調節ペプチドを不活性化する活性を持っていることを明らかにした。また、ECEおよびNEPが膜分画に存在し細胞表面や細胞内で作用するのに対し、SEPは組織特異的な可変的スプライシングの結果、酵素活性を持つ活性部位を細胞外に分泌するアイソエンザイムを産生し、細胞外でも作用することが明らかにした。従って、SEPは局所でのプロセッシング機能に加え血中や体液中において「循環プロセッシング酵素」として作用し得るという極めてユニークな特徴を持っており、SEPは細胞生物学的な見地からも興味深い研究対象であると考えられる。
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