研究概要 |
慢性心不全患者への末梢性αβ交感神経遮断薬カルベジロールと中枢性α2作用を介する中枢性交感神経抑制薬クロニジン投与時の心臓と血管交感神経活動の変化を調べ比較した。それぞれ心臓交感神経活動を心電図の心拍変動スペクトル解析で,末梢血管交感神経活動を橈骨動脈の脈波を用いたトノメトリー法による非観血的血圧変動スペクトル解析を用いて分析した.同意を得た心不全患者2名と高血圧患者7名を対象とした。 心拍変動解析では交感神経系の指標であるLF/HF比は高血圧群でカルベジロール投与前1.47、1時間値3.39、2時間値1.78と1時間値で一時的に上昇していたが、クロニジン投与では明らかな上昇は見られなかった。しかし心不全群ではカルベジロール投与により1時間値はむしろ低下、クロニジン投与では逆に上昇しており、高血圧群と異なる変化を示した。末梢の交感神経指標とされる血圧変動のLF/HF比はカルベジロール、クロニジンともに高血圧群では1時間値で上昇を示し2時間値では低下するのに対し、心不全群では徐々に上昇を示しており、末梢では交感神経活性が亢進している可能性があった。副交感神経の指標とされるHFはLF/HFとはおおむね逆の反応を示したが、心不全群のクロニジン投与後は明らかに低下を示していた。クロニジンは中枢性に交感神経を抑制するがカルベジロールに比べて副交感神経活性でも抑制する可能性が示唆された。血中のノルエピネフリンは高血圧群へのカルベジロール投与では1時間では低下するが2時間値はむしろ有意な上昇を示した。心不全群では持続的な上昇を示した。クロニジン投与では逆に高血圧群で1時間値は増大し、心不全群で持続的に低下を示した。体液性因子への作用はカルベジロールとクロニジンでは逆の変化を示していた。
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