研究概要 |
我々は心筋細胞、内皮細胞のそれぞれの培養系においてACE阻害薬存在下の低酸素刺激で心筋細胞におけるキニン産生が著しく増加されることを報告した(Circulation 99:817-822,1999)。平成10年度は、心筋細胞内キニノーゲン、キニン、カリクレインの局在を証明するするため多角的な方法を用いて検討した。 抗ブラジキニン抗体は、家兎を用いたポリクローナル抗体を作成しブラジキニンを定量する事は可能であったが、免疫抗体染色を行うほどの組織特異性と濃度は十分ではなかった。抗キニノーゲン抗体を作成することは技術的には可能であるが、ラット由来の低分子キニノーゲン及び高分子キニノーゲンを精製する事が困難で、他施設に問い合わせたところわずかに持ち合わせはあるものの十分量ではなかった。 そこでラット腎臓の尿細管より分泌されるカリクレインを比色定量する方法論を確立し、心筋細胞に応用し培養上清中のカリクレイン活性を定量したが、心筋培養上清中のカリクレイン活性は非常に低く、低酸素負荷群とコントロール群にて差を見いだせなかった。そのため、western-blotting法により細胞中に増加していると考えられる腺性カリクレインを同定しようと準備をすすめている。また、心筋細胞ににおける局所キニン・カリクレイン系の関与を検討するため、[^3H]-ブラジキニンを用いて、ミクロオートラジオグラフィーによりブラジキニンの受容体であるB1受容体およびB2受容体の局在や発現様式について検討中である。
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