単球と血管内皮の相互作用は動脈硬化の発症、進展において重要である。現在まで我々は、この相互作用が種々の接着分子や動脈硬化性サイトカインの発現を誘導することを報告してきた。今回、我々は、細胞外マトリックスの消化に重要な働きをしているmatrix metalloproteinase-1(MMP-1)がこの相互作用によって産生されることを見いだした。単球と血管内皮との共培養によりMMP-1は時間依存性に産生され、免疫染色によりその産生細胞が単球と血管内皮の両方であることが示された。このMMP-1の産生は、IL-1βおよびTNFαの中和抗体によりそれぞれ約30%および40%抑制された。また、細胞内シグナル分子の阻害剤による検討では、このMMP-1産生はPKC阻害剤であるCalphostin CやH-7およびPKA阻害剤であるKT5720により影響を受けなかったが、Srcチロシンキナーゼ阻害剤であるherbimycin AおよびMEK阻害剤であるPD98059により有意に抑制された。そこで実際にc-SrcおよびMAPキナーゼ(ERK1/2)の活性化を検討したところ、単球と内皮細胞の共培養によりc-ScrとERK1/2は、それぞれ約20分と30分をピークとして活性化された。以上の結果により、単球と血管内皮の相互作用によりc-SrcとERK1/2が活性化され、これらシグナル分子を介してMMP-1の産生が誘導されることが示唆された。今後、さらに詳細なシグナル伝達経路や、以前より報告してきたこの相互作用による接着分子やサイトカインの発現が同様のシグナル伝達経路を介しているかどうかを検討し、実際にこのシグナル経路を阻害することにより動脈硬化の形成を抑制することができるかを検討する予定である。
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