研究概要 |
冠血管インターベンション後に再狭窄を引き起こす機序として、血管平滑筋細胞の遊走・増殖による内膜肥厚のメカニズムが重視されている。組織特異的プロモーター/エンハンサーを用いた特定の組織を遺伝子治療する方法が期待されているが、未だ平滑筋特異的プロモーターで確立されているものはない。我々がクローニングした平滑筋ミオシン重鎖(SMHC)遺伝子プロモーター(Katoh et al.,J Biol Chem 269:30538-30545,1994)は、少なくともin vitroの実験系では平滑筋特異的であることが示され、他施設での追試にても同様の臓器特異性が示されている。初年度の研究では、SMHC遺伝子の平滑筋細胞特異性を保つ最小の領域をnarrow downするところまでを一応のゴールとした。まず、SMHC遺伝子の約18kbの1st Intronの中の5′側3.8kbの中に平滑筋細胞に特異的なエンハンサーが存在することを明らかとした後、この3.8kbを制限酵素BamHIで三つの断片に分け、各々の断片をチミジンキナーゼ(TK)のプロモーターを有するベクター(pBLCAT5)にサブクローニングし、各fragmentのエンハンサー活性を培養平滑筋細胞及び繊維芽細胞のcell lineであるNIH3T3細胞や、骨格筋細胞のcell lineであるC2C12にin vitro transfectionすることによって調べた。その結果、平滑筋特異性を保つ領域は約700bpのBamHI fragment中に存在することをつきとめ、その領域の全塩基配列を決定した。塩基配列中には、三つのGATA siteをはじめ、いくつかのputativecis-trans acting elementが存在するが、現在そのfragmentと平滑筋細胞より得た核抽出液を用いて、DNA-protein binding siteを検索中である。
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