研究概要 |
今年度は、ホルモン刺激によるカベオラ、カベオリンの変化の検討として、新生児ラット培養心筋細胞におけるαアドレナリン受容体刺激の効果を検討した。α1受容体刺激薬であるフェニレフリンの投与では、走査電顕により評価される細胞あたりのカベオラ数の増大とともにカベオリン-3蛋白(+45%)、mRNA発現(+40%)冗進がみられた。その機序を解明するため、PKCの直接的刺激薬のPMAを投与したところ、カベオラ、カベオリン-3に対する増大効果はみられたが、フェニレフリシの効果に比し弱かった。そこで細胞内Ca^<2+>の影響を推測し、calcium ionophore(ionomycin)を投与すると、フェニレフリンと同等のカベオラ、カベオリン-3に対する効果が見られた。従って、α1受容体刺激によるカベオラ、カベオリン-3発現に対する制御は、細胞内Ca^<2+>動員によると推測された。一方、成熟心においてはカベオリン-3が主として発現しているが、心発達過程におけるカベオリンの発現制御は不明である。そこでラット心発達段階におけるカベオリンの変化を検討した。胎生17日のラット心室筋では、カベオリン-1,-2,-3ともわずかに発現していたのみであったが(順に成人量の14%、11%、28%)、共に胎生21日において著明に発現は冗進し、新生児期に最大となった。成熟ラットでは発現がやや低下した。ショ糖密度勾配法や免疫染色により評価されるカベオリンの細胞内分布は、各成熟段階で変化はみられなかった。本年度の研究により心臓のカベオリン、カベオラの生理学的変化およびホルモンによる制御が明らかとなった。来年度は、α1アドレナリン受容体刺激によるカベオリン発現増大の詳細なメカニズムを解明すると共に、カベオリン過剰発言トランスジェニック・マウス作製に着手する。
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