研究概要 |
[背景]血管新生は虚血組織における壊死の防止や機能回復にとって重要な役割を果たす。高脂血症は動脈硬化の主要な危険因子であるが、高脂血症が虚血組織における血管新生に与える影響は明らかではない。 [目的]高脂血症が虚血部(下肢)血管新生に与える影響を検討する。 [方法]麻酔下に、雄Sprague-Dawley(SD)ラットの左大腿動静脈並びにその分枝を結紮し大腿動静脈の全長を摘出し片側虚血下肢モデルを作成した。ラットは正常群および高脂血症群の2群に分け、後者には2%コレステロール食を2週間与えた後に虚血モデルを作成した。虚血作成後14病日に局所血管新生を組織学的に検討した。 [結果]SDラットにおいて、血清総コレステロール、LDLコレステロール値は高脂血症群において有意に増加した{19±2mg/dL(n=10)vs.12±1mg/dL(n=13)p<0.001}。また血清HDL-コレステロール値は有意に低下した。Factor VIII免疫組織化学染色法で血管内皮細胞を同定し毛細血管密度を定量評価した。虚血下肢骨格筋(左側)における毛細血管密度は、高脂血症群において有意に低下していた(15±2/hpf vs.24±2/hpf;<0.001)。非虚血側(右側)における毛細血管密度は両群間で有意差はなかった(22±1/hpf vs.23±1/hpf)。同様の結果はSD系統ラットにおいても認められた。血管造影による,Angiographic scoreにて新生血管を定量したところ、、高脂血症群におて血管新生の程度が有意に源弱していた。 [結語]高脂血症モデルラットにおいては、虚血組織(下肢)における血管新生が障害されていることが示された。
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