Angelman症候群(AS)の原因遺伝子であるubiquitin protein ligase遺伝子(UBE3A)の変異解析を行うために、対象となるAS患者を集積し、分子遺伝学的解析を行った。UBE3A遺伝子に変異を有する可能性があるのは、ASのなかで、非欠失、非片親性ダイソミー、非刷り込み変異例であり、AS患者の約20%にすぎない。したがって、対象となる患者を同定、集積するためには、まず、系統的かつ、簡便な分子遺伝学的解析法の確立が必須である。これまでに、実施してきた方法を改善して、PCR法による簡便なDNAメチル化テストを開発し、新しく、分子遺伝学的診断法を構築した。この方法によりこれまで集積したAS患者の解析を行った。 これまでの集積とあわせて、AS非欠失例散発例30例、家族例3家系、6例を集積し、分子遺伝学的解析を行った。その結果、散発例では片親性ダイソミー1例、刷り込み変異3例、その他26例であり、家族例では刷り込み変異1家系2例、その他2家系4例であった。その他の例が非欠失、非片親性ダイソミー、非刷り込み変異例にあたり、UBE3A遺伝子の変異解析の対象となる。対象となる30例全例から末梢血由来ゲノムDNAを抽出し、PCR法により翻訳領域を増輻し、SSCP法により変異のスクリーニングを行った。しかし、原因と考えられる突然変異は同定されなかった。変異が同定できなかった理由として、UBE3A遺伝子の変異率が対象患者の約20%くらいと低いことが最近の研究で明らかにされたので、実施した変異スクリーニング法では限界がある可能性が考えれれた。そこで、PCR増幅した産物を直接シークエンスを行う方法へ変更し行う予定である。
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