研究概要 |
1. 臨床的検討 凍結保存された脳腫瘍および腫瘍周辺の正常脳組織よりRNAを抽出し,RT-PCR法にてプロスタグランディン合成酵素(PHS-1,PHS-2),actinのmRNAの発現を検討した.PHS-1はglioblastoma 1/4(陽性/総検体数),astrocytoma 1/4,meningioma 2/5,ependymoma 1/1,control 0/4でependymoma以外はいずれも弱陽性であった。PHS-2はglioblastoma 4/4,astrocytoma4/4,meningioma 4/5,ependymoma 1/1,control 3/4で、いずれもPHS-1に比し強く発現しており、正常controlよりも腫瘍の方で強く発現していた。また,Western blotting法による蛋白レベルでの発現の検討でも同様な傾向が認められた。PHS-2については、免疫組織化学による検討も行い、上記のいずれの腫瘍組織においても腫瘍細胞自体にPHS-2が発現していることが確認された。正常脳では、神経細胞と腫瘍周辺のグリオーシスの部分でPHS-2の発現が認められた。 2. 培養細胞を用いた検討 6種類のglioblastomaのcell lineを用いて,脳腫瘍組織の場合と同様にPHS-1,PHS-2のmRNAと蛋白の発現を検討した.KMG4,T98,U138においてPHS-2が恒常的に発現していた。腫瘍細胞(KMG4)の増殖はPHS-2阻害剤(NS398)により有意に抑制されることが、BrdUの取り込みによる実験で明らかになった。 以上の結果より、脳腫瘍においてPHS-2の発現が増強しており、それが腫瘍の増殖に関与していることが示唆される。
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