今回、先天性甲状腺機能低下症の病因を遺伝子レベルで解析するため、TSH受容体遺伝子および甲状腺特異的転写因子であるPAX-8、TTF-1遺伝子の分析をおこなった。対象は、当科で診察している先天性甲状腺機能低下症の家系(両親および同胞)例で、方法は、対象者の末梢血球白血球のgenomic DNAを抽出し、イントロンを含めて各エクソンをPCRにて増幅しDNA解析をおこなった。また、株化した対象者白血球を用い、m-RNAを抽出し、RT-PCR法にてc-DNAを合成し塩基配列の解析を行い、欠失ならびに変異の有無を検索した。 その結果、1)TSH受容体遺伝子の解析では今まで報告のある14箇所の塩基配列で欠失、変異は認められなかった。2)PAX-8遺伝子については、現在塩基配列の解析中である。3)TTF-1遺伝子については、原発性甲状腺機能低下症と呼吸不全をきたした重度精神運動発達遅滞をもつ染色体異常姉妹において欠損を認めた。本症例における病状発現にこの欠損が十分関与している可能性(haploinsufficiencyの結果)があると考えた。
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