異染性白質変性症(MLD)はアリルスルファターゼ活性低下によって生じるリピドーシスの一つであり著明な脱髄を特徴とする疾患である。臨床的に発症年齢から幼児型、若年型、成人型に分類されている。欧米人患者においてはこれら臨床型と遺伝子型との相関が明らかにされているが、本邦MLD患者においては確立していない。今回の研究で日本人11例のMLD患者の遺伝子解析を行い1996年にはQ153H、G308Vという2つの新しい遺伝子変異を同定し、1998年にはL298S、219一2A→Gというさらに2つの遺伝子変異を同定した。 本症においては現在治療法が存在しない。脱髄疾患のためグリア細胞が標的臓器となりうる。そこで治療法の開発の基礎研究として臍帯血から造血幹細胞(CD34陽性細胞)を分離、精製しレトロウイルスにグルクロニダーゼ遺伝子を組み込みこれをCD34陽性細胞に導入した。導入効率はCFU-GMで平均66.8%、LTCIC(long-term culture-initiatingcell)では20%と50%であった。酵素活性は5週間正常レベルにまで上昇した。少数の造血幹細胞への導入にもかかわらず酵素活性が十分上昇したことはグリア細胞を用いた本症の治療の可能性が示唆された。
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