皮膚の光老化に関する多くの研究は実験動物や単層培養線維芽細胞を用いて行われているが、今回、我々は線維芽細胞が自ら作り出すコラーゲンなどの細胞外基質内で重層して三次元構造をとる真皮モデルを用い、線維芽細胞のおもな細胞外基質成分mRNA発現に対するUVAの作用を検討した。1000mJ/cm^2のUVA(320-400nm)を照射し、3、6、12、24時間後に線維芽細胞からtotal RNAを抽出しRT-PCRを行ない、mRNAの発現量を半定量した。その結果、1・コラーゲン合成、分解系に関しては、collagen α1(I)のmRNA発現は3、6時間後に減少した。 MMP-1のmRNA発現は6、12時間後に増加し、反対にMMP-1の活性を阻害するTTMP-1のmRNA発現は3、6、12時間後で経時的に減少を示した。MMP-2のmRNA発現は6時間後にわずかに増加した。ゼラチンザイモグラフィーによる培養上清中のMMP-2活性は24時間後に顕著に増加していた。リジルオキシダーゼmRNA発現は3、6、12時間後に経時的に減少した。これらのmRNA発現の結果から、UVA照射は短期的にはコラーゲン量減少の方向に作用すると考えられた。2・グリコサミノグリカンに関しては、プロテオグリカンであるデコリンとビグリカンのmRNA発現を検討したところ、デコリンは3時間後から増加、ビグリカンは6、12、24時間後で顕著に増加を示し、グリコサミノグリカンに関しては合成増加の方向に作用すると考えられた。3・エラスチンの合成、分解系に関しては、エラスチンのmRNAは24時間後に増加、エラスターゼのmRNAは3、6、12時間後に減少し、エラスチン量増加の方向に作用すると考えられた。これらのUVA照射による細胞外基質成分のmRNA発現の変化は、光老化皮膚で組織学的に認められる変化とほぼ一致すると考えられ、さらにタンパクレベルでの検討を行う予定である。
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