研究概要 |
結合組織成長因子は,形質転換成長因子(TGF-β)に制御されながら、線維化を伴う疾患および創傷治癒に関与する。まず、我々は、腫瘍と結合組織成長因子の発現をテーマとし、悪性黒色腫や線維腫、線維肉腫などの腫瘍における結合組織成長因子の発現を調べた。次に,培養ヒト線維芽細胞においてTGF-β1、β2、β3の3つで、結合組織成長因子の発現が異なるが否かをELISAを用いて調べた。我々の実験結果では,β2において若干結合組織成長因子の発現が少ないが、β1、β2、β3で大きな変化はないと考えられた。次に、ラットを用い実際の創傷部でどのようにCTGFが発現しているかを検討した。ラット背部に経6mmの皮膚欠損創を作成し、経時的に創部を生検し、ホルマリン固定、パラフィン包埋の上、切片を作成した。ジゴキシゲニンでラベルした結合組織成長因子プローブを用い、インサイチュウハイブリダイデェションを行った。その結果、上皮化までの全ての過程で潰瘍辺縁及び潰瘍底の線雑芽細胞で結合組織成長因子の発現を見た。結合組織成長因子の発現量は、炎症の残っている潰瘍作成2、4日後では比較的少なく、肉芽形成が著明となる6、8日目に増加していた。また、8日目では新生血管の内皮細胞においても発現を見た。結合組織成長因子は創傷治癒の過程で実際に発現していることが確かめられた。その発現は、TGF-βが供給される炎症の時期には少なく、その後の肉芽形成とともに発現が著明となった。この結果は、TGF-βによる結合組織成長因子の制御に関する基礎データと一致していた。本実験のさいに認められた新生血管内皮細胞での結合組織成長因子の発現は基礎的データがないため現在検討中である。
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