強皮症皮膚線維芽細胞においてコラーゲン遺伝子の発現および転写活性は正常皮膚線椎芽細胞と比較して3倍程度亢進していた。正常線維芽綿胞ではTCF-βおよびoncostatin M刺激にてコラーゲン遺伝子の発現が増強しだが、強皮症線維芽細胞では変化しなかった。 TGF-βおよびoncostatin Mの刺激は、SP1/Sp3結合領域を介していることが知られているため、まずSp1とSp3の蛋白量、mRNA発現量を強皮症線維芽細胞、正常線維芽細胞間で比較したが、有意な差はなかった。さらにコラーゲン遺伝子プロモーター領域におけるSp1およびSp3のDNA結合性について強皮症線維芽細胞と正常線推芽細胞について検討したが有意な差は認められなかった。 近年他の遺伝子でSp1の発現量、DNA結合性は変化せず、セリンリン酸化が転写活性を亢進させるという報告があり、強皮症線維芽細胞におけるSp1のセリンリン酸化の程度を検討した。強皮症線維芽細胞では正常線維芽細胞と比較してSp1のセリンリン酸化が亢進していた。この結果は強皮症線維芽細胞のコラーゲン遺伝子発現亢進にSp1セリンリン酸化が関与していることを示唆した。 さらに強皮症線推芽細胞のコラーゲン遺伝子発現亢進に対するSp1セリンリン酸化の関与について検討するため、Sp1結合阻害剤を用いてコラーゲン遺伝子の発現を検討したところ、強皮症線維芽細胞のコラーゲン遺伝子発現亢進は著明に抑制され、Sp1の関与が強く示唆された。 また強皮症線維芽細胞における情報伝達系の異常についても検討し、p38 MAPキナーゼの経路が強皮症線維芽細胞のコラーゲン発現異常に関与する可能性が示唆され、更に検討を進める予定である。
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