今年度は、ヒトメラノーマ細胞株の樹立と、自己メラノーマ特異的CTLの誘導をめざしてきた。本施設(信州大学医学部皮膚科)および協力医療機関を受診した黄色人種のメラノーマ患者の検体からの腫瘍細胞株の樹立を試みた。原発巣が9例、皮膚転移1例、リンパ節転移2例、腹水1例であった。また、メラノーマ細胞株が樹立できた場合には混合培養により自己メラノーマ特異的CTLを誘導するため、メラノーマ患者の末梢血リンパ球を分離、凍結保存した。 結果:原発巣9例、皮膚転移1例、リンパ節転移2例、腹水1例からのメラノーマ細胞の培養を試みた。腹水から腫瘍を培養した1例は長期継代でき、その細胞は、免疫染色によりメラノーマと確認された。その他の病変からのメラノーマ細胞株の樹立は困難だった。これは、原発巣は潰瘍化していることが多く、培養中に細菌感染を起こしてしまうことが主な原因であるが、早期病変では腫瘍細胞の絶対量が少ないことや、線維芽細胞の増殖が抑えられないことも原因と考えられた。また、短期間はメラノーマ様の細胞が増殖しても継代することはできなかった。 今後の展開:腫瘍細胞株の樹立が困難であるので、自己のメラノーマ細胞株との混合培養で自己メラノーマ特異的CTLを誘導することは、容易ではないと考える。今後は、培養腫瘍細胞にかわり、凍結腫瘍組織をCTL誘導の抗原刺激として用いることも検討したいと考えている。CTLが誘導できた場合はクローン化を行ない、CTLクローンによるメラノーマ抗原の認識機構を解明する。
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