研究概要 |
NK細胞に代表される初期免疫反応が、その後のT細胞を中心とする獲得免疫反応の成立に重大な影響をおよぼすことは、種々の感染症の実験系で明らかにされているが、癌免疫反応でのそれに関する知識は非常に乏しい。B16メラノーマ細胞はMHCクラス1抗原の発現が極端に低下しているため、NK細胞の良い標的細胞となり、それゆえNK細胞が初期のB16組織に優位に浸潤する。ところが、一方でB16細胞のMHCクラス1分子により提示される抗原ペプチドがCTLの標的となることが近年明らかにされた。このように、B16細胞は担癌初期にはNK細胞に、またその後はCTLに拒絶可能な癌細胞であるにもかかわらず、移植後免疫反応による攻撃を受けることなく増殖する。この理由としてB16移植後初期にNK細胞機能の抑制が起こり、その結果として効果的なCTL誘導が妨げられていると考えられる。 本年度の研究によって、初期のB16メラノーマ組織に、NKl.1(NK、NKT)細胞の他に、αβT、γδT細胞が浸潤すること、その中でもTh1サイトカイン産生を示すNK1.1細胞が主要なB16障害性細胞となりうるが、Th2サイトカインを産生するαβT、γδT細胞の存在がその機能発現に大きく影響することを見い出したさらに種々のin vitro,in vivoでの研究から、NK1.1細胞増殖はαβT、γδT細胞のTh2サイトカインにより、またNK1.1細胞のB16障害能はαβT、γδT細胞表面に存在するMHCクラスI分子であるH-2K^b分子により抑制されることを証明した。
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