研究概要 |
免疫ブロット法(平成10年度) 方法 自己抗体の性状の確認のため、免疫ブロット法を先行した。EDTA剥離正常ヒト表皮および正常ヒト培養表皮細胞から蛋白分画を抽出し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて流した蛋白をニトロセルロース膜に転写する。患者血清、IgA分画のみの患者血清を1次抗体として、ABC法で反応させ、ケミルミネッセンス法にて陽性バンドを同定した。 結果 通常のプロット法では陽性バンドが検出されなかったため、サンプルの濃度を上げる、washingを念入りに行う、露光時間を上げる等の処置を加えたところ、200kD付近にIgAに反応する陽性バンドが認められた。しかしながらサンプル量があまりにも少量であったため陽性バンドから抽出した分画を用いた蛍光抗体間接法は施行できなかった。このことから血清中に自己抗体が存在するものと考え、次の免疫電顕法に進んだ。 免疫電顕法(平成11年度) 方法 平成10年度から引き続き免疫電顕法を施行した。患者結膜、正常人結膜、正常人皮膚を固定した後レジン包埋した。ウルトラミクロトームにて超薄切片作製後、抗ヒトIgA抗体、患者血清を1次抗体として、ABC法を用いコロイド金にてラベリングし、透過型電子顕微鏡(JEOL,JEM-100SX)にて観察した。 免疫スクリーニング法(平成11年度) 方法 正常ヒト結膜細胞、正常ヒト表皮細胞よりmRNAを抽出、逆転写反応にて合成されたcDNAをλgt11発現ベクターにサブクローニングする。発現ベクターを吸着させた宿主菌Y1090のコロニーのプラークリフティングを行い、精製された患者IgA分画血清を1次抗体として免疫染色を行う。陽性コロニーを取り出した後増殖、cDNAを抽出し、塩基配列を決定する。 結果 正常ヒト皮膚の表皮細胞間にわずかながらコロイド金のラベリングが認められた。しかしながら、ラベリングの分布特性がはっきりしなかったため、患者血清のIgA分画を用いて再度免疫電顕法を施行したが、前回以上の所見は得られなかった。原因としては患者血清中の自己抗体価が非常に低かった、あるいはサンプル量自体が少なく免疫スクリーニング法等の実験の継続が困難であったことなどが考えられる。以上のことから本患者血清には上皮細胞間の成分を認識する自己抗体分画が存在することは非常に強く示唆されるが、認識される抗原の分布特性や正常を確定するまでには至らなかった。
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