研究概要 |
デルマトポンチンと呼ばれる分子がプロテオグリカンであるデコリン、およびサイトカインであるTGF-βと結合することから、この分子がデコリンやTGF-βに及ぼす影響を検討し、以下の結果を得た。 1. デルマトポンチンとデコリンとの解離定数は100nMで、デコリンがデルマトポンチンと複合体を形成するとTGF-βの結合は各々単独が結合する量の約3倍となる。 2. 固相化したデルマトポンチンとTGF-βの結合は溶液中の本分子およびデコリンにより抑制される。 3. デルマトポンチンはTGF-βによるplasminogen activator inhibitor promoterの転写活性を約2倍に増強する。(O.Okamoto,S.Fujiwara et al.:Biochem.J.337:3;537-541.1999) デコリン-デルマトポンチン複合体は生体内で通常存在すると考えられることから、細胞外マトリックスの高次構造がTGF-βを効率的に局所に保持し、局所のサイトカインの機能を制御しうることが考えられる。 さらに、種々の疾患におけるデルマトポンチンの発現を検討し、以下の結果を得た。 1. 本分子は皮膚の線維化を来す疾患である強皮症、および肥厚性瘢痕由来の線維芽細胞において量的に変動する。 2. 本分子の発現はTGF-β、interleukin-4、コラーゲンによって制御される。(K.Kuroda.O.Okamoto,et al.:J.Invest.Dermatol.1999 in press)。 これらの結果は本分子の発現の変化がこれらの病態に関与することを示唆するものであり、慢性で難治なこれらの疾患の形成機序の解明に役立つと期待される。 現在我々はデルマトポンチンがコラーゲンと結合すること、他のサイトカインである platelet-derived growth factor、fibroblast growth factorを結合することを見いだし、これらの分子がこれらのサイトカインの生物活性に及ぼす影響を検討中である。また、本分子の生理活性部位を特定するために本分子の部分ペプチドを作製中である。
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