1. Epstein-Barr(EB)ウイルス関連皮膚リンパ腫の臨床、組織学的検討 EBウイルス潜伏感染の有無をスクリーニングした100例以上の皮膚リンパ腫症例のなかで、EBウイルスが高率に検出されたのは皮膚または皮下腫瘤性病変で発症し、皮下脂肪織炎様の組織像を示すREAL分類の血管中心性リンパ腫、皮下脂肪織炎型リンパ腫などに該当する症例であった。そこで、これらのリンパ腫について腫瘍細胞の起源、EBウイルス感染の有無、予後等の相関を調べた。検討した症例は生検組織の免疫染色、T細胞受容体再構成の結果からT細胞リンパ腫9例、NK細胞リンパ腫12例であり、細胞の起源が特定できなかった症例が3例であった。T細胞リンパ腫では3例、NK細胞リンパ腫では9例にEBウイルスが検出された。EBウイルス陽性T細胞リンパ腫とNK細胞リンパ腫の予後はほぼ同等であったが、EBウイルス陰性T細胞リンパ腫の予後は前2者よりも有意に良好であった。NK細胞リンパ腫ではEBウイルス陽性例と陰性例で臨床・組織像、予後に差は見られなかった。また、HE染色標本でT細胞リンパ腫は血球貪食像が、NK細胞リンパ腫では血管中心性増殖像が有意に高率に認められた。 2. EBウイルス陽性皮膚リンパ腫のEBウイルスサブタイプの検討 9例のEBウイルス陽性皮膚リンパ腫患者の生検組織から得たDNAを用いて、EBNA2遺伝子の3'末端側の遺伝子多型をPCRおよびdot blot hybridizationで検討し、EBウイルスのサブタイプを決定した。その結果、すべての症例でEBNA type 1が検出され、1例のみtype 2も認められた。EBNA type 1株はtype 2株と比べて造腫瘍活性が強いと考えられているが、世界中に存在するサブタイプであり、EBウイルス関連リンパ腫がアジア地域に多発する要因にはウイルス株の地域的偏在よりも宿主側または環境要因が主体である可能性が考えられた。
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