ケラチンは全ての上皮細胞に含まれる中間径線維の構成蛋白で、上皮組織におけるケラチン発現は正常の組織や上皮性腫瘍ではその分化によって異なることが解明されている。今年度は毛嚢系腫瘍のうちでも比較的多くみられる毛嚢上皮腫(trichoepithelioma)8例を集積し、そのケラチン発現パターンを検討した。本症のケラチン発現パターンの特徴として腫瘍胞巣の辺縁もしくは全体にCytokeratin(K)8とK19の発現がみられることが明かとなった。このケラチン発現パターンは正常毛嚢峡部の外毛根鞘の発現パターンと同一であり、同部への分化または同部を起源とすると結論づけられた。この分化もしくは起源を示す胞巣の割合は症例によって多少の差異があり、同じ腫瘍であっても症例により分化の割合にvariationがあることが示唆された。一方、皮膚科領域では表皮、汗腺、脂腺、毛嚢など多岐にわたる器官より腫瘍が発生し、その発生母地や分化度によって複雑な分類がなされ、毛嚢系腫瘍も細かく分類されている。来年度は毛嚢上皮腫(trichoepithelioma)以外の毛嚢系腫瘍を集積し、そのケラチン発現パターンを検討する予定である。
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