研究概要 |
シャーレに培養したヒト皮膚線維芽細胞に,UVBを照射すると線維芽細胞は免疫組織学的にelastinを産生し,elastinのmRNAは照射量に応じた発現量の増加がみられた.しかし,UVAの照射では線維芽細胞はelastinを産生することはなかった.次に,collagen gelに線維芽細胞とその表面に角化細胞を培養した三次元培養系を用意した.これにUVAを照射すると,線維芽細胞はelastinを産生した.しかし,表面に角化細胞を持たない線維芽細胞のみよりなる三次元培養系ではUVAを照射しても線維芽細胞はelastinを産生しなかった.これより,UVA照射下における線維芽細胞のelastin産生には角化細胞が何らかの役割を担っていることが想定された.また,培養液中のIL-10のELISA法による定量では,非照射群に比べ紫外線照射群は有意に増加していた.この機序を更に詳しく調べるため,シャーレに培養した角化細胞にUVAを照射し,その上清を培養線維芽細胞に投与したが,線維芽細胞はelastinを産生しなかった.今後は,紫外線照射後の抗IL-10抗体の投与がelastin産生に影響を与えるかどうか調べたい. 三次元培養系のHE染色やVerhoeff-van Gieson染色では,細胞間器質に弾性線維や膠原線維などを思わせるものは観察されず,紫外線照射群と非照射群との間に大きな差は観察されなかった.今後は電顕にて正常皮膚と三次元培養の弾性線維の形成を比較し,紫外線を反復照射した場合の三次元培養における弾性線維形成について検討を加えたい.
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