研究概要 |
本年度の研究目標はラットに回転加速度を印加することによる瀰慢性軸策損傷の作成であった。ラットの脳のサイズから考えて人間の数倍の回転加速度を加える必要があると考えられた。回転加速度の強さとしては、最低でも毎秒30回転程度は必要と考えられる。このような大きな加速度を得るには加速よりも減速の方が容易である。 最初に考えたのは、バイクの駆動輪を浮かせた状態で車軸にラットを固定した装置を繋ぎ、最高速度で回転させたのもフルブレーキングで停止させる、というものである。仮に時速100キロ相当から2秒間で停止できたとしても、タイヤの直径が約60cmとして回転加速度(減速度)は毎秒10回転を越えることは困難である。 最終的には、直流モーターとコンデンサーを並列に繋ぎ、モーターを回転させた状態で急にスイッチを閉じるとモーターが発電器として働いて逆方向に強い電圧がかかり、その電圧によるモーターの逆回転力か強い制動力として働いてモーターが急停止するという機構を考えた。この機構に整流器と交流電流の変圧器(電圧を変えることでモーターの回転数を制御できる)を組み合わせた装置を製作した。モーターの定格出力は550W,最大回転数は毎秒約60回転、停止までの時間は約1秒である。 この装置にウレタンによって麻酔したラットを固定した板を接着剤で張り付けてモーターを回転させて実験したが、重心のずれによる強い遠心力がかかり、電圧を約50Vまで上昇させたときに装置が破損した。この時の回転数は毎秒10-15回転、回転加速度も毎秒10-15回転前後と思われる。ラットには打撲等はなく、正常に呼吸していた。直ちにラットを実験用の8TのMRIで撮影したが、T2強調画像及び拡散強調画像で脳のMRI信号強度に特に異常は指摘できなかった。 今後は重心のずれが少なく強固な器具を作成し、より強い回転加速度を印可して実験を進めてゆく予定である。
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