本検討の目的は、HIV-1感染者における中枢神経障害評価における脳血流シンチグラフィの意義を、特に定量評価に注目して調査することである。定量評価法としては、Tc-99rn ethtl cysteinatedimer(ECD)とRIアンジオグラフィを用いた非侵襲的な方法を用いているが、この方法で算出される脳血流値が不感時間による数え落としの影響で過大評価されることが明らかになった。不感時間は散乱状況によって異なることが知られているが、患者撮像時の不感時間を実測した報告はない。我々は、数え落としを補正してより正確な脳血流量を算出するために、患者撮像時の不感時間評価法を考案し、実用的な数え落とし補正法を開発した。 HIV-1感染者における定量的脳血流SPECTでは、MRIで異常がみられた部位に対応する局所血流低下域が観察されたが、MRIで正常の部位には局所血流低下域は観察されなかった。これは脳血流SPECTの高い特異性を示唆するが、MRIで正常の部位にしばしば血流低下域がみられるという従来の報告とは異なっている。さらに症例を追加して検討する予定である。MRIで局在性の異常のみられた患者では、全脳血流量の定量値も低下している傾向がみられた。また、全脳血流量はMRIによるNAA/Cr比と正の相関を示した。これらのことから、簡便に得られる全脳血流定量値が、HIV感染者における中枢神経障害の指標として有用である可能性が示唆された。
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