中枢ニコチン-アセチルコリン受容体(nAChRs)のニコチンによるup-regulationは齧歯類の実験において広く知られている。ニコチン投与によりBmaxを変化させずにKdを変化させることがin vitroの実験においていくつかのリガンドを用いて証明されている。死後のヒトの脳においても喫煙者のH-3 nicotineの集積が高いことが知られている。アゴニストによるup-regulationという他では見られないこの現象が喫煙者での耐性や依存の重要な鍵となっている可能性がある。私は動物におけるin vivoのデータがこれまでにないため、既に有効性が証明されたニコチンのアゴニストであるI-125 Epibatidineを使用してin vivoにおけるnAChRsの状態を観察した。また、同時に(-)-nicotineによって引き起こされるnAChRsのup-regulationの性差についても検討した。 CD-1マウス(雄/雌)を使用して、(-)-nicotineの皮下注射10日を施行して、各々を後述のように分けた。 1) 雄コントロール:生理的食塩水投与 2) 雄ニコチン群:2.0mg/kgニコチンを一日2回皮下注射、これを10日の連続して行った。 3) 雌コントロール:生理的食塩水投与 4) 雌ニコチン群:2.0mg/kgニコチンを一日2回皮下注射、これを10日の連続して行った。 ニコチン群では有意にI-125 Epibatidineの集積が上昇しており、また雌ではその上昇率が雄に比較して有意に高かった。これは性ホルモンに因るのかもしれない。また女性喫煙者がニコチン依存から離脱しにくいという他の報告例を説明する現象かも知れない。
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