本研究は、3次元モード測定PET(陽電子放出断層画像診断法)における定量測定精度を検討することを目的とする。特に、トレーサMP4A(11Cメチル4ピペリジルアセテイト)を用いたアルツハイマー病患者等を対象とした脳AchE活性の動態測定に焦点を絞る。平成10年度には、以下の通り、ほぼ計画通りの研究を遂行した。 1 MP4Aトレーサ全身分布の把握 ボランティアー対象の動態測定の結果、胸・腹部に頭部の20倍以上の放射能が一時的に分布することが判明した。3次元モードでは装置視野外の放射能分布が測定結果に無視できない影響を及ぼす。そこで、装置視野外にあるこの胸・腹部放射能に注目し解析を進めた。 2 ファントム実験 視野外放射能分布の3次元モード測定への影響を定量的に測定するためのファントム実験を行った。PET装置視野内・外に標準円筒ファントムを設置し、散乱・吸収補正精度、装置計数率特性等を測定した。その結果、PET装置視野外に視野内の20倍程度の放射能がある時に、最大でプラスあるいはマイナス5%程度の系統誤差が生じる可能性があることが判明した。 3 PET装置モンテカルロシミュレーションプログラムの開発 プログラムの開発をさらに進め、最新のPET装置の3次元モード測定を正確に再現できるように改良するとともに、視野外放射能分布にも対応するように修正を加えた。視野外放射能の影響を詳細に分析するためのモンテカルロ計算の結果、視野外放射能に起因する装置により検出されたガンマ線の半数は視野外物質中で散乱を受けていること他、様々な重要な情報が得られた。 以上研究成果を、IEEE医用画像国際会議、日本核医学会、日本医学物理学会他にて発表した。今後、分析を進め、脳AchE活性(k3パラメータ)の定量測定精度を評価することを目標とする。
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